脱水症状を防ぐには?必要な水分・栄養素と摂取量の目安を解説

脱水症状を防ぐために最も重要なのは、喉が渇く前からこまめに水分を取ることです。
ただし、運動や屋外作業などで大量に汗をかいた場合は、水分だけでなく、汗と一緒に失われたナトリウムも補う必要があります。一方、日常生活で大量に汗をかいていない人が、塩分や経口補水液を積極的に取る必要はありません。
この記事では、脱水症状を防ぐために取るべき水分や栄養素と、その量の目安を解説します。
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脱水症状とは、どのような状態なの?
脱水症とは、体内の水分と電解質で構成される「体液」が不足した状態です。
体液には、次のような役割があります。
- 体温を一定に保つ
- 酸素や栄養を全身へ運ぶ
- 老廃物を体外へ排出する
- 血液の量や濃度を保つ
- 筋肉や神経の働きを支える
体液が不足すると、体温調節や血液循環がうまく働かなくなります。特に高温多湿の環境では、脱水が熱中症につながることもあります。
脱水の主な原因は、次のとおりです。
- 暑さや運動による大量の発汗
- 発熱
- 下痢や嘔吐
- 食欲低下による水分・食事量の減少
- 飲酒
- 利尿薬など一部の薬の使用
高齢者は喉の渇きを感じにくく、乳幼児は体内の水分量を調節する機能が十分に発達していません。本人が渇きを訴えていなくても、周囲が水分補給を促すことが大切です。
脱水症状の代表的なサイン
脱水が始まると、次のような変化が現れることがあります。
- 喉や口の中が渇く
- 唇や舌が乾燥する
- 尿の回数や量が減る
- 尿の色が濃くなる
- だるさや疲れを感じる
- めまいや立ちくらみがする
- 頭痛や吐き気がある
- 筋肉がつる
- 集中力や反応が低下する
環境省の資料でも、脱水が進むと尿量が減り、尿の色が濃くなることが示されています。また、脱水や血液循環の悪化によって、めまい、頭痛、吐き気などが起こる場合があります。
軽い脱水では、強い喉の渇きを感じないこともあります。「喉が渇いたら飲む」だけでなく、渇く前から水分を取ることが重要です。
脱水症状を防ぐために取るべき水分・栄養素
脱水予防で特に重要なのは、次の3つです。
- 水分
- ナトリウム
- 糖質
このうち、通常の生活で優先すべきなのは水分です。ナトリウムや糖質を含む飲料が必要になるのは、主に大量に汗をかいた場合や長時間運動した場合です。
1.水分
脱水予防の基本は、失った水分を補うことです。
環境省では、食事に含まれる水分とは別に、飲料から取る水分として1日約1.2Lを目安としています。ただし、これは一般的な成人に向けた目安であり、すべての人に同じ量が必要という意味ではありません。
必要な水分量は、次の条件によって変わります。
- 年齢や体格
- 気温や湿度
- 運動量や活動量
- 発汗量
- 食事から取る水分量
- 発熱、下痢、嘔吐などの有無
- 持病や服用している薬
一度に大量に飲むのではなく、起床時、食事中、外出前後、入浴前後などに分けて取ると、無理なく続けられます。
たとえば、コップ1杯を1日6回程度取れば、飲料から約1.2Lを確保できます。実際の量は、コップの大きさや発汗量に合わせて調整してください。
心臓病や腎臓病などで水分制限を指示されている人は、この目安をそのまま適用せず、医師の指示に従いましょう。
2.ナトリウム
ナトリウムは、体内の水分量や浸透圧を調節する電解質です。食塩にはナトリウムが含まれています。
汗をかくと、水分だけでなくナトリウムも失われます。大量に汗をかいた状態で水だけを大量に飲み続けると、血液中のナトリウム濃度が低下し、筋肉のけいれんなどを起こすことがあります。
大量に汗をかいた場合は、次の濃度が一つの目安です。
- 塩分濃度0.1~0.2%
- 水1Lに食塩1~2g
- 水500mLに食塩0.5~1g
- ナトリウム40~80mg/100mL
市販の飲料を選ぶ場合は、栄養成分表示のナトリウム量や食塩相当量を確認しましょう。
高温環境での長時間作業について、厚生労働省の資料では、塩分を含む飲料を20~30分ごとに取る方法が示されています。ただし、必要量は発汗量、作業内容、体格などによって異なります。
普段から塩分を増やす必要はない
大量に汗をかいていない場合は、脱水予防のために塩分を追加する必要は基本的にありません。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人の1日当たりの食塩摂取目標量を次のように定めています。
- 成人男性:7.5g未満
- 成人女性:6.5g未満
日本人は食塩を取り過ぎている傾向があります。脱水が心配だからといって、日常的に塩あめ、梅干し、漬物などを増やすと、塩分の過剰摂取につながる可能性があります。ナトリウムの補給が必要なのは、主に大量の発汗があった場合と考えましょう。
3.糖質
糖質には、ナトリウムや水分の吸収を助ける役割があります。また、長時間の運動や作業では、エネルギーの補給にも役立ちます。
日本スポーツ協会では、1時間を超える運動を行う場合、4~8%程度の糖質を含む飲料が、水分補給や疲労予防に役立つとしています。
糖質4~8%は、次の量です。
- 飲料100mL当たり糖質4~8g
- 飲料500mL当たり糖質20~40g
ただし、短時間の外出や通常の生活で、毎回スポーツドリンクを飲む必要はありません。
スポーツドリンクには糖質が含まれているため、日常的に大量に飲むと、エネルギーや糖質の取り過ぎにつながります。普段は水や麦茶などを基本にし、大量に汗をかく場面で使い分けましょう。
4.カリウム
カリウムも、体内の水分バランスや筋肉、神経の働きに関係するミネラルです。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」における18歳以上の目標量は、次のとおりです。
- 成人男性:1日3,000mg以上
- 成人女性:1日2,600mg以上
カリウムは、次のような食品に含まれています。
| 食品 | 量 | カリウム量の目安 |
|---|---|---|
| バナナ | 可食部100g | 360mg |
| キウイフルーツ | 可食部100g | 300mg |
| トマト | 100g | 210mg |
| 普通牛乳 | 100g | 150mg |
| 無糖ヨーグルト | 100g | 170mg |
数値は文部科学省の日本食品標準成分表に基づく目安です。品種や商品、調理方法によって変わります。
ただし、カリウムは日頃の食事から取る栄養素です。大量に汗をかいた直後の脱水対策では、まず水分とナトリウムの補給を優先します。
腎機能が低下している人は、カリウムの摂取制限が必要な場合があります。医師から指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
状況に合わせた飲み物と量の目安
| 状況 | 適した飲み物 | 量や選び方の目安 |
|---|---|---|
| 普段の生活 | 水、麦茶など | 飲料から1日約1.2Lを一つの目安に調整 |
| 短時間の外出 | 水、麦茶など | 外出前後にも水分を取る |
| 大量に汗をかく運動・作業 | 塩分を含むスポーツドリンクなど | 塩分濃度0.1~0.2%、ナトリウム40~80mg/100mLが目安 |
| 1時間を超える運動 | 塩分と糖質を含む飲料 | 糖質濃度4~8%程度が目安 |
| 下痢・嘔吐などで脱水状態が疑われる | 使用目的に合った経口補水液 | 製品表示を確認し、医師や薬剤師に相談 |
| 食事が取れる | 汁物、果物、野菜、乳製品など | 3食を基本に、体調に合わせて取る |
食べ物からも水分や電解質を取れますが、すでに脱水症状が出ている場合に、食べ物だけで速やかに回復させることは困難です。
食欲がない、飲み込みにくい、嘔吐を繰り返しているといった場合は、無理に食べさせず、医療機関へ相談しましょう。
経口補水液とスポーツドリンクの違い
経口補水液とスポーツドリンクは、同じものではありません。
スポーツドリンク
スポーツドリンクは、運動や作業で失われた水分、ナトリウム、エネルギーを補給するための飲料です。
大量に汗をかく場面では役立ちますが、商品によってナトリウム量や糖質量が異なります。購入時は栄養成分表示を確認してください。
経口補水液
経口補水液は、下痢や嘔吐、熱中症などによる脱水状態で、水分と電解質を補給するための飲料です。一般的なスポーツドリンクよりもナトリウムなどの電解質を多く含みます。
消費者庁は、経口補水液について、脱水状態でない人が普段の水分補給として飲むものではないと案内しています。
経口補水液には、下痢・嘔吐による脱水に適した製品と、熱中症による脱水に適した製品があります。使用する前に、パッケージに記載された用途を確認しましょう。
高血圧、心臓病、腎臓病、糖尿病などがある人や、ナトリウム、カリウム、糖質、水分の制限を受けている人は、自己判断で使用せず、医師や薬剤師に相談してください。
脱水症状を防ぐためのその他のポイント
喉が渇く前に水分を取る
軽い脱水では、喉の渇きを感じないことがあります。
次のようなタイミングで水分を取る習慣をつけましょう。
- 起床後
- 食事中
- 外出前
- 運動や作業の前後
- 入浴の前後
- 就寝前
就寝前の量は、夜間の排尿や持病などを考慮して調整してください。
朝食を抜かない
食事からも、水分、ナトリウム、カリウム、糖質などを取っています。
朝食を抜くと、水分だけでなく、電解質やエネルギーも不足した状態で活動を始めることになります。
食欲がない場合は、次のような食べやすいものを少量ずつ取りましょう。
- 果物
- ヨーグルト
- 汁物
- おにぎり
- やわらかく調理した野菜
暑さを避ける
水分を取っていても、高温多湿の環境に長時間いると熱中症になる可能性があります。
- エアコンを適切に使用する
- 暑い時間帯の外出を避ける
- 日陰や冷房のある場所で休憩する
- 通気性のよい服を選ぶ
- 帽子や日傘を使用する
- 暑さ指数「WBGT」を確認する
水分補給だけでなく、体温が上がりにくい環境を整えることも大切です。
お酒を水分補給の代わりにしない
アルコールには尿量を増やす作用があるため、ビールなどを水分補給の代わりにすることはできません。
飲酒中や飲酒後は、水や麦茶などのアルコールを含まない飲み物も取りましょう。
高齢者や子どもには周囲が声をかける
高齢者は、体内の水分量が少なく、喉の渇きも感じにくくなります。
子どもは、遊びに夢中になると水分補給を忘れることがあります。高齢者や子どもには、時間を決めて周囲が水分補給を促しましょう。
このような症状がある場合は救急要請を
次のような状態がある場合は、重い熱中症や脱水の可能性があります。
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 会話が成り立たない
- 自分で水分を飲めない
- 意識がもうろうとしている
- けいれんしている
- 体が非常に熱い
- 涼しい場所で休んでも改善しない
意識がはっきりしない人に無理に飲ませると、飲み物が気管に入る危険があります。
すぐに救急車を呼び、冷房のある場所へ移動させてください。衣服を緩め、首、脇の下、太ももの付け根などを冷やしながら救急隊を待ちましょう。
まとめ
脱水症状を防ぐために最も重要なのは、喉が渇く前からこまめに水分を取ることです。
一般的な成人では、食事に含まれる水分とは別に、飲料から1日約1.2Lを取ることが一つの目安です。ただし、年齢、体格、発汗量、持病などによって必要量は変わります。
大量に汗をかいた場合は、水分に加えてナトリウムも補います。塩分濃度0.1~0.2%、またはナトリウム40~80mg/100mL程度の飲料が目安です。
一方、大量に汗をかいていない人が、脱水予防のために塩分を増やす必要はありません。普段は水や麦茶を基本とし、運動量や発汗量に合わせてスポーツドリンクなどを使い分けましょう。
経口補水液は、日常の水分補給ではなく、脱水状態での水分・電解質補給を目的とした飲料です。使用目的や持病によって注意点が異なるため、事前に薬剤師に利用方法を聞いてみると、もしもの時に判断に迷いがなくなります。





