処方薬と市販薬の違いとは?入手方法・目的・選び方を薬剤師目線で解説

体調が悪いとき、医療機関を受診するべきか、市販薬で様子を見るべきか迷うことがあります。処方薬と市販薬は、どちらも病気や症状への対応に使われる医薬品です。しかし、入手方法や使用目的、選ぶまでの流れには違いがあります。
処方薬だから必ず効き目が強く、市販薬だから弱いとは限りません。同じ有効成分を含んでいても、含有量、効能・効果、用法・用量、対象年齢などが異なる場合もあります。大切なのは、薬の強さだけで比べず、症状や体質に合うものを適切に使うことです。
この記事では、処方薬と市販薬の違いをわかりやすく解説します。薬を受け取るときや、市販薬を購入するときの注意点も紹介します。
この記事のポイント
- 処方薬は、医師や歯科医師の診察と処方に基づいて使用します
- 市販薬は、軽度な不調などのセルフケアに用いる医薬品です
- 同じ成分でも、含有量や効能・効果などが同じとは限りません
- 処方薬と市販薬を併用するときは、成分の重複に注意が必要です
- 迷ったときは、自己判断を続けず薬剤師へ相談しましょう
処方薬とは?
一般に「処方薬」と呼ばれるものは、医師または歯科医師が診察し、患者さんの状態に合わせて処方する医療用医薬品です。病気や症状だけでなく、年齢、体質、アレルギー歴、持病、妊娠・授乳の状況なども踏まえて選ばれます。
院外処方の場合は、医療機関から交付された処方箋を薬局へ提出します。薬剤師は処方内容、ほかの薬との重複、飲み合わせなどを確認します。その後、必要な説明を行ったうえで薬をお渡しします。
処方薬には、市販薬では対応していない病気に使う薬もあります。一方で、市販薬と同じ有効成分を含む薬もあります。処方薬というだけで、一律に「市販薬より強い」と判断することはできません。
処方薬は、診察時点の患者さんの状態に合わせて処方されたものです。以前の残りを自己判断で使ったり、家族や知人へ渡したりしてはいけません。同じような症状でも、原因や適した薬が異なる可能性があります。
処方薬を受け取るまでの基本的な流れ
処方薬を受け取る一般的な流れは、次のとおりです。
- 医療機関で診察を受ける
- 医師または歯科医師が薬の必要性を判断する
- 紙または電子の処方箋が発行される
- 対応する薬局へ処方箋を提出する
- 薬剤師が処方内容や飲み合わせを確認する
- 薬剤師から説明を受け、薬を受け取る
処方箋は、原則として発行日を含めて4日以内が使用期間です。土曜日、日曜日、祝日も日数に含まれます。ただし、医師が別の使用期間を記載した場合は、その期限に従います。
詳しくは「処方箋には有効期限がある!知らないと損する基礎知識と注意点」もご覧ください。
市販薬とは?
市販薬は、処方箋がなくても薬局やドラッグストアなどで購入できる医薬品です。OTC医薬品、大衆薬とも呼ばれます。OTCは「Over The Counter」の略です。
市販薬は、主に日常生活で起こる軽度な不調へのセルフケアに使われます。たとえば、軽い頭痛、鼻水、胃の不快感、虫刺されなどに対応する製品があります。ただし、使用できる症状や年齢は製品ごとに異なります。
市販薬には、一般用医薬品と要指導医薬品があります。一般用医薬品は、副作用などのリスクに応じて第1類、第2類、第3類に分けられます。
分類により、販売時に対応できる専門家や情報提供の方法が異なります。
| 区分 | 主な特徴 | 販売時に対応する専門家 |
|---|---|---|
| 要指導医薬品 | 使用時に特に注意が必要な医薬品 | 薬剤師 |
| 第1類医薬品 | 一般用医薬品の中で特に注意が必要 | 薬剤師 |
| 第2類医薬品 | 比較的注意が必要 | 薬剤師または登録販売者 |
| 第3類医薬品 | 第1類・第2類以外の一般用医薬品 | 薬剤師または登録販売者 |
市販薬は「誰でも自由に使える薬」という意味ではありません。購入前に説明書を確認し、定められた用法・用量を守る必要があります。
持病がある方や、ほかの薬を使っている方は、購入前に薬剤師などへ相談しましょう。
処方薬と市販薬の違いは?
処方薬と市販薬の主な違いを整理すると、次のようになります。
| 比較する項目 | 処方薬 | 市販薬 |
|---|---|---|
| 入手方法 | 医師・歯科医師の処方に基づき、薬局などで受け取る | 薬局やドラッグストアなどで購入する |
| 主な目的 | 診断された病気や症状に対する治療 | 軽度な不調などのセルフケア |
| 薬の選択 | 医師・歯科医師が患者さんの状態を踏まえて処方する | 本人が選び、必要に応じて薬剤師などへ相談する |
| 受け取りまでの流れ | 診察、処方、調剤、服薬説明を経る | 症状などを確認し、製品を選んで購入する |
| 費用 | 保険診療では原則として健康保険の対象。条件により自己負担額は異なる | 原則として全額自己負担 |
| 情報提供 | 薬剤師が用法・用量、注意点などを説明する | 区分に応じて薬剤師または登録販売者が対応する |
| 使用する人 | 処方を受けた本人 | 製品に定められた対象者 |
入手方法の違い
処方薬は、医師や歯科医師による診察と処方が基本です。薬局では、処方箋に記載された内容に基づいて調剤します。
患者さんが処方薬を店頭から選び、通常の市販薬と同じように購入するものではありません。
市販薬は、処方箋なしで購入できます。ただし、要指導医薬品と第1類医薬品は薬剤師が対応します。第2類・第3類医薬品は、薬剤師または登録販売者へ相談できます。
棚から自分で選べる製品でも、不安があれば購入前に相談してください。
使用目的の違い
処方薬は、診察や検査などを通じて把握した病気や症状に対して使用します。患者さんごとに薬の種類、量、使用期間などが検討されます。
継続的な治療では、効果や副作用を確認しながら処方内容が調整されることもあります。
市販薬は、軽度な不調を自分で手当てするセルフメディケーションに用いられます。通院せずに購入できる利便性がありますが、診断の代わりにはなりません。
症状が重い場合や、原因がわからない場合は受診が必要です。
購入・受け取りのプロセスの違い
処方薬は、医療機関と薬局の双方で確認を受けます。薬局では、処方内容に疑問点があれば、薬剤師が処方した医師へ確認することがあります。
これは、安全に薬を使用するために必要な手続きです。
市販薬では、購入する方が症状や使用者の情報を伝えます。薬剤師などは、年齢、症状が続く期間、持病、併用薬などを確認します。
そのうえで、使用できる製品があるか、医療機関の受診が望ましいかを判断する手助けをします。
費用の違い
保険診療で処方された薬は、原則として健康保険の対象です。ただし、年齢や所得、公費負担の有無などにより自己負担は異なります。
保険が適用されない診療や薬もあるため、すべての処方薬が同じ負担割合になるわけではありません。
市販薬の代金は、原則として購入者が全額負担します。一部の対象製品は、条件を満たすとセルフメディケーション税制の対象になる場合があります。
対象の表示や申告条件を確認し、レシートを保管してください。
効き目や安全性の考え方の違い
「処方薬は強く、市販薬は弱い」とは限りません。同じ成分でも、1回量や1日量が違うことがあります。
市販薬には複数の有効成分を含む製品もあります。複数の薬を併用すると、目的としない成分まで重なる場合があります。
どちらの薬にも、副作用が起こる可能性があります。処方薬は、医師と薬剤師による管理が前提です。
市販薬は、説明書の内容を理解し、決められた範囲で使うことが前提です。安全性を単純に比べるより、適切な使用条件が異なると考えましょう。
処方薬と市販薬はどう使い分ける?
軽度で原因の見当がつく一時的な不調は、市販薬で対応できる場合があります。ただし、購入前に説明書の「してはいけないこと」「相談すること」を確認してください。
使用できる期間も製品ごとに異なります。
次のような場合は、市販薬だけで様子を見続けず、医療機関や薬剤師へ相談しましょう。
- 症状が強い、または急に悪化した
- 息苦しさや意識の異常などがある
- 高熱や強い痛みなどが続いている
- 説明書に記載された期間を使っても改善しない
- 薬を使った後に発疹、息苦しさなどが現れた
- 乳幼児、高齢者、妊娠中または授乳中である
- 持病がある、または複数の薬を使用している
- 同じ症状を何度も繰り返している
緊急性が高い症状がある場合は、薬局への相談よりも医療機関の受診を優先してください。判断に迷うときは、地域の救急相談窓口を利用する方法もあります。
処方薬と市販薬についてよくある質問
Q. お薬の名前が異なるのに、処方薬と市販薬があるときがあります。この違いは?
商品名が違っても、同じ有効成分を含む処方薬と市販薬があります。医療用医薬品として使われていた成分を、市販薬へ転用したものは「スイッチOTC」と呼ばれます。
ただし、有効成分が同じでも、同じ薬とは限りません。次のような点が異なる場合があります。
- 1錠または1回あたりの成分量
- 1日に使用できる回数や最大量
- 認められている効能・効果
- 使用できる年齢
- 錠剤、液剤、塗り薬などの剤形
- 単一成分か、複数成分の配合剤か
- 使用できる期間や注意事項
また、処方薬には先発医薬品とジェネリック医薬品があります。同じ有効成分でも、メーカーによって商品名が異なる場合があります。
名前だけで判断せず、有効成分、含有量、剤形を確認することが大切です。
処方薬の代わりに市販薬を使ったり、その反対をしたりする場合は、自己判断で置き換えないでください。薬剤師へ相談し、症状や使用中の薬を伝えたうえで確認しましょう。
Q. 処方薬をもらうときに注意点はありますか?
薬局では、現在使っている薬をすべて伝えてください。別の医療機関から処方された薬だけでなく、市販薬、漢方薬、サプリメント、健康食品も含みます。
成分の重複や飲み合わせを確認するために必要です。
お薬手帳があれば、毎回同じものを提示しましょう。手帳を複数に分けると、情報をまとめて確認しにくくなります。
市販薬を使ったときや、薬の使用後に体調変化があったときも記録しておくと役立ちます。
詳しくは「お薬手帳とは?なぜ持参や提示を求められるのか」をご覧ください。
薬を受け取るときは、次の内容も伝えましょう。
- 薬や食べ物によるアレルギー歴
- 過去に薬で副作用が出た経験
- 妊娠中、妊娠の可能性、授乳中であること
- 腎臓病、肝臓病などの持病
- 飲み込みにくさや生活時間などの事情
- 服用できずに残っている薬の有無
薬の名前、目的、使用量、使用時間、使用期間を確認してください。飲み忘れたときの対応も、薬ごとに異なります。
錠剤を自己判断で割ったり、つぶしたりすることも避けましょう。疑問点は受け取るときに薬剤師へ確認してください。
Q. 市販薬を購入するときでも、注意すべき点はありますか?
市販薬にも副作用や飲み合わせの問題があります。身近に購入できることと、誰にでも安全に使えることは同じではありません。
購入前に、外箱や説明書の注意事項を確認してください。
薬剤師などへ相談するときは、次の情報を伝えると選びやすくなります。
- 誰が使用するのか、年齢はいくつか
- どのような症状が、いつから続いているか
- すでに使用した薬があるか
- 現在使用している処方薬や市販薬
- 持病、アレルギー歴、副作用歴
- 妊娠、授乳の有無
特に、かぜ薬、解熱鎮痛薬、鼻炎薬などは、異なる商品でも同じ成分を含む場合があります。複数の市販薬を併用すると、知らないうちに成分が重なることがあります。
処方薬と併用する場合も、購入前に確認が必要です。
使用後に異常を感じた場合は、使用を中止し、医師や薬剤師へ相談してください。説明書に記載された期間を使っても改善しない場合も、使い続けずに相談しましょう。
Q. 処方薬と市販薬を一緒に使ってもよいですか?
併用できる場合もありますが、自己判断での併用は避けてください。同じ有効成分が重複したり、似た作用の成分が重なったりする可能性があります。
一方の薬が、もう一方の作用に影響する場合もあります。
処方薬を使用している方が市販薬を購入するときは、処方内容がわかるお薬手帳を提示してください。
商品名だけでなく、実際に使用している量や時間も伝えましょう。
Q. 市販薬で改善しないときはどうすればよいですか?
説明書に記載された期間を使用しても改善しない場合は、使用を続けずに医師または薬剤師へ相談してください。
症状の原因が想定と異なり、診察や検査が必要な可能性があります。
「もう少し使えばよくなるだろう」と漫然と続けると、受診が遅れることがあります。悪化している場合や新しい症状が現れた場合は、使用期間を待たずに相談しましょう。
Q. 家族に処方された薬を使ってもよいですか?
使用してはいけません。処方薬は、診察を受けた本人の病状や体質に合わせて処方されています。
同じ症状に見えても、原因や必要な量が異なる場合があります。
余った処方薬を後日自己判断で使うことも避けてください。残薬がある場合は、捨て方を含めて薬局へ相談しましょう。
まとめ
処方薬と市販薬は、入手方法や使用目的、薬を選ぶ過程が異なります。
処方薬は、医師や歯科医師の診察と処方に基づいて使用します。市販薬は、主に軽度な不調を自分で手当てするために用います。
ただし、処方薬だから強い、市販薬だから安全とは一概にいえません。同じ有効成分でも、含有量、効能・効果、対象年齢などが異なることがあります。
名前やパッケージだけで判断しないことが大切です。
薬を安全に使用するには、処方薬、市販薬、サプリメントなどの使用状況をまとめて伝える必要があります。お薬手帳を活用し、気になることがあれば薬剤師へ相談してください。
ハニュウ薬局では、処方箋による調剤だけでなく、市販薬や飲み合わせに関するご相談も承っています。全国の医療機関で発行された処方箋を受け付けています。
お薬について不安や疑問がある方は、お近くの店舗へご相談ください。
お薬の受け取りをスムーズにしたい方へ
ハニュウ薬局では、LINEによる処方箋の事前送信に対応しています。
来局前に処方箋画像を送ることで、薬局での待ち時間短縮につながります。お薬を受け取る際は、処方箋の原本をご持参ください。
ご注意:本記事は、処方薬と市販薬に関する一般的な情報を提供するものです。個別の病気の診断や治療、医薬品の選択を目的としたものではありません。症状や薬の使用については、医師または薬剤師へご相談ください。





