アレルギーとは?症状のメカニズムと効果的な薬について

現代日本において、アレルギーは国民の約2人に1人が何らかの症状を持つ国民病となっています。特に過去50年間で急激に増加し、現在では約半数の人が何らかのアレルギー疾患を抱えているという状況です。
本記事では、アレルギーの基本的な仕組みから代表的な症状、そして効果的な治療薬について詳しく解説します。
アレルギーとは
アレルギーとは、本来は体に無害な物質(アレルゲン)に対して免疫システムが過剰に反応してしまう現象のことです。私たちの体には、細菌やウイルスなどの有害な異物から身を守るための「免疫」という仕組みが備わっています。しかし、この免疫システムが花粉、ダニ、食物などの本来は無害な物質に対しても「有害な異物だ!」と誤認し、免疫反応を起こしてしまうのがアレルギーです。
このような場合、体はアレルゲンを排除しようとして、鼻水、涙、くしゃみ、かゆみ、じんましん、下痢など、多様な症状を引き起こします。つまり、本来は身体を守る免疫が、逆に身体を傷つけてしまうのが、アレルギーの仕組みなのです。
アレルギーにはどのようなものがあるのか?
アレルギーはその種類や原因に多様性があります。代表的な分類としては、アレルゲンの侵入経路、発症時期、免疫反応のタイプなどがあります。以下では主要な分類方法に沿って詳しく解説します。
- 吸入性アレルギー
- 食物アレルギー
- 接触性アレルギー
吸入性アレルギー
空気中に漂っているアレルゲンを吸い込むことで起きるアレルギーです。代表的なアレルゲンには花粉、ハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛やふけなどがあります。
- 花粉症(季節性アレルギー性鼻炎): スギやヒノキをはじめ、イネ科やブタクサなどさまざまな植物の花粉によって起こります。
- 通年性アレルギー性鼻炎: ハウスダストやダニなどが原因となり、1年中症状があることが特徴です。
食物アレルギー
特定の食品を摂取することで、体が過剰に反応し、下痢、嘔吐、じんましん、呼吸困難などを引き起こすものです。
- 乳幼児に多いアレルゲン: 鶏卵、牛乳、小麦など。
- 成人に多いアレルゲン: そば、エビ、カニ、果物(リンゴやキウイなど)など。
場合によっては食後すぐにアナフィラキシーショックという重篤な症状が現れることもあり、注意が必要です。
接触性アレルギー
アレルゲンが皮膚に直接触れることによって発症するタイプです。
- 原因物質: 金属、ゴム、洗剤、香料など。
- 症状: 数時間から2日後に赤み、かゆみ、ブツブツなどの皮膚炎が現れます。
アレルギー反応の種類
アレルギー反応は、免疫の仕組みに基づいてI型からIV型に分類されます。
I型(即時型)アレルギー
もっとも一般的なタイプで、アレルゲンとIgE抗体が反応し、15〜30分以内に症状が出ます。花粉症・アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・喘息などがこのタイプです。
II型(細胞障害型)
体の細胞にアレルゲンが付着して、それを抗体が攻撃するタイプ。薬剤アレルギーや自己免疫疾患に関連しています。
III型(免疫複合体型)
アレルゲンと抗体が血中で結合し、血管や組織に沈着して炎症を起こすタイプです。たとえば、血清病、関節リウマチなどが該当します。
IV型(遅延型)
T細胞が関与し、48〜72時間経過してから症状が出るタイプです。代表例としては接触性皮膚炎、ツベルクリン反応などがあります。
アレルギーの代表的なお薬とは?
アレルギー治療の中心は薬物療法です。症状のタイプや重症度によって、適切な薬を選ぶことで、日常生活の質が大きく向上します。ここでは主要な薬の種類とその作用について解説します。
抗ヒスタミン薬
ヒスタミンはアレルギー反応の中心的な物質で、くしゃみや鼻水、かゆみを引き起こします。これをブロックするのが「抗ヒスタミン薬」です。
- 第1世代: 効果は強力ですが、眠気や口の渇きなどの副作用があります。
- 第2世代: 眠気が少なく、1日1回の服用で済むタイプが多いため、生活への支障も少ないです。
- 第3世代: 副作用が軽減され、運転の制限がありません。高い有効性もあります。
ステロイド薬
非常に強力な抗炎症作用を持ち、アレルギーに伴う炎症を抑制します。使用部位に応じて、外用(皮膚)、吸入(喘息)、点眼、点鼻、内服、注射などがあります。
- 外用薬: アトピー性皮膚炎やじんましんなどに使用。
- 点鼻薬: 鼻づまりに効果的で、毎日使うことで花粉症対策になります。
- 吸入薬: 喘息においては、吸入タイプのステロイドが第一選択薬とされています。
使用期間や量に注意する必要がありますが、医師の診断のもとで適切に使用すれば非常に高い効果を発揮します。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
ヒスタミン以外にも、アレルギーにはロイコトリエンという物質が関与しています。この物質をブロックするのがこの薬です。
鼻づまりが特に強い場合や、抗ヒスタミン薬の効果が十分でない場合に使用されます。気管支喘息にも用いられる薬で、気道の炎症や収縮を防ぎます。例えば、モンテルカスト(シングレア)などが該当します。
メディエーター遊離抑制薬(抗アレルギー薬)
アレルギー反応が起きる前に「ヒスタミンなどの化学物質が出ないように」することを目的とした予防薬です。症状が出る前から使うとより効果的です。
即効性はあまりないため、継続使用が推奨されます。軽度の症状や、他の薬との併用でさらなる効果を狙う場合に適しています。
漢方薬
体質改善をはかるために利用されることの多い漢方薬も、アレルギー治療に効果を発揮することがあります。とくに花粉症による水っぱな、くしゃみ、かゆみなどに対応した処方があります。
代表的な漢方薬には次のようなものがあります。
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう): 水っぽい鼻水やくしゃみに効果があります。
- 葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい): 繰り返す副鼻腔炎や鼻づまりに効果があります。
- 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう): めまいや耳の症状もある人に適応される場合があります。
まとめ
アレルギーは誰もが罹る可能性のある慢性疾患であり、日本ではその患者数が年々増加しています。アレルゲンは食物や花粉、ハウスダスト、金属など多岐にわたり、症状も皮膚、鼻、目、消化器、呼吸器と全身に及びます。
治療にはまず「原因を知る」ことが重要です。その上で、必要に応じた薬物療法を行なうことで、多くの方は症状をコントロールできるようになります。予防と対策をしっかり行い、健康で快適な毎日を目指しましょう。
もし不安な方、重い症状がある方は、お近くの医師に相談して、正確な診断と適切な治療を受けてください。