市販薬を服用する上での注意点とは?

薬は、正しく使うことで最大の効果を発揮し、副作用を最小限に抑えられます。保険調剤の場合は、必ず薬剤師の「服薬指導」があります。しかし、市販薬の場合は、要指導薬・第一類医薬品を除いて義務付けられていません。そのため、これらのお薬を使う時は、添付されている書類などをよく読み、正しく使うことが重要です。
1. 処方箋と添付文書の正しい読み方
薬のパッケージや添付文書には、以下の情報が必ず記載されています。
- 【いつ】(用法)
- 【どれだけ】(用量)
- 【何のため】(効能・効果)
- 【注意点】(副作用・相互作用)
初めての薬であれば、自己判断ではなく、目を通して利用しましょう。わからないことがあれば、購入した薬局やかかりつけの薬局などに質問するのも良いでしょう。また、最近は生成AIを使えば、簡単な説明は回答が得られる場合が増えていますので、使ってみるのも良いでしょう。
2. 用量は遵守する
自己判断で用量を変えるのはやめましょう。薬の用量は、治験を重ね、効果と安全性を確認した上で決定されています。患者さんの年齢、体重、病状、他の薬との相互作用まで考慮した最適な量とされているからです。
3.服用のタイミングを忘れない
服用には最適なタイミングがあります。そのタイミングでお薬を服用するようにするのが原則です。しかし、忘れてしまうことなどもあり、服薬カレンダーを使うことで、忘れることを防ぐことも重要です。
説明 | |
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食前 | 食事の20〜30分前。胃が空の状態で吸収を高めたい薬など。 |
食後 | 食事の30分以内。食べ物と一緒で吸収を高めたり、胃への刺激を抑えたい薬。 |
食間 | 食事の2時間後。空腹時に効果が発揮される薬。食事の最中ではなく食事と食事の間。 |
就寝前 | 寝る30分前。睡眠を改善したい薬や夜間に効かせたい薬。 |
頓服薬 | 調子の悪い時に服用するお薬。 |
4.飲み方のポイント
十分な量の水でお薬は服用します。水は、コップ1杯200mlが目処です。また、お薬が口からこぼれないように背筋を伸ばし、座位で服用することが基本です。
注意すべきは、カフェインを豊富に含むコーヒーやお茶などの飲料は避けます。これは、お薬にカフェインが含まれていたり、化学反応する成分が含まれていると、お薬が想定より強く効果が出たり、弱まったりするからです。
5.剤形別の服用方法
お薬には様々な形があります。それぞれで、最適な服用方法が異なります。また、保存方法もそれぞれ異なっておりますので、添付された書類やパッケージをよく読んで従うようにしてください。
説明 | |
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錠剤・カプセル | 水で飲み込み、口の奥に残らないように。 |
散剤・顆粒剤 | オブラートや服用ゼリーに包むと苦みを軽減 多めの水で流し込む |
液剤 | ケースをよく振って均一にする 容器の口を直接口に付けない |
貼付剤 | 清潔で乾いた平らな皮膚に貼り、1回分ずつ使う 汗や化粧品を拭き取ってから貼る |
座薬 | 挿入前にワセリンや水で滑りやすくし、肛門の奥深くに優しく入れる |
6.飲み合わせ・相互作用に注意
飲み合わせ・相互作用とは、複数の薬や食品が同時に体内で作用し合い、一方の吸収・代謝・排泄が変化して効果が強まったり弱まったり、副作用リスクが増減することです。
代表的な飲み合わせの例と注意点は以下の通りです。これ以外にもありますので、心配であれば情報を検索したり、かかりつけの薬剤師に相談するなどの手段をとりましょう。
6-1. ワルファリン + NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)
- 相互作用機序
NSAIDsが血小板機能を抑制し出血傾向を高めるほか、ワルファリンのたんぱく結合競合により遊離型のワルファリン濃度が上昇 - 主なリスク
消化管出血、頭蓋内出血など重篤な出血イベント
6-2. MAO阻害薬 + SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- 相互作用機序
両剤によるセロトニン作用の過剰促進 → セロトニン症候群(高熱、痙攣、精神状態変化) - 主なリスク
発汗亢進(多汗)、振戦(ふるえ)、横紋筋融解、意識障害
3. 硝酸薬(ニトログリセリン等)+PDE5阻害薬(シルデナフィル等)
- 相互作用機序
両剤ともにcGMP増加を介して血管拡張 → 急激な血圧低下 - 主なリスク
失神、重篤な低血圧、心筋虚血増悪
4. ACE阻害薬(カプトプリル等)+カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン等)
- 相互作用機序:
両剤とも腎からのカリウム排泄抑制 → 高カリウム血症 - 主なリスク:
不整脈、致死性心停止
5. スタチン(アトルバスタチン等)+マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン等)
- 相互作用機序:
マクロライドがシトクロムP450 3A4を強力に阻害 → スタチン血中濃度上昇 - 主なリスク:
横紋筋融解症、劇症肝障害
6. グレープフルーツジュース + CYP3A4代謝薬(シンクイノリ類、カルシウム拮抗薬など)
- 相互作用機序:
グレープフルーツ中のフラノクマリン類が腸管CYP3A4を阻害 → 経口薬の血中濃度上昇 - 主なリスク:
過量効果による低血圧、徐脈、筋障害、QT延長
その他の注意点とは?
- お薬は、原則的に、直射日光や高温多湿を避け、子どもの手が届かない場所に保管しましょう。お薬の種類によっては、冷蔵庫などに保存する必要があるものもあります。
- 期限切れの薬は効果が低下したり安全性が損なわれたりするため、使用しないでください。