湿布の正しい使い方と効果的な活用法

日常生活の中で、筋肉痛や肩こり、捻挫、腰痛などに湿布を使用する方は多いのではないでしょうか。薬局やドラッグストアで手軽に購入できる湿布は、多くの家庭の常備薬として親しまれています。しかし、意外にも湿布は種類も多く、使い方もさまざまです。実は、湿布について知らないことも多いかもしれません。
今回は湿布の正しい使い方から種類、保存方法、注意点まで詳しくご紹介します。
湿布は何のために使うの?
湿布は、打撲や捻挫などのケガから、腰痛や膝の痛みなどの慢性的な痛みまで、様々な痛みを和らげるために使用されます。しかし、多くの方が「湿布は冷やして痛みを和らげるもの」と思われているかもしれませんが、実は湿布には炎症を抑える程の冷やす効果はありません。温湿布・冷湿布共に「炎症を抑える薬」が塗られていて、それが皮膚から浸透していく経皮吸収型の「消炎・鎮痛剤(痛み止めの薬)」です。
薬剤が皮膚から浸透することで、患部の痛みや炎症を直接和らげる効果があります。実際に、湿布(テープ剤)は飲み薬よりも効率的に痛み止めの成分を患部に届けられることが示されています。
また、湿布は飲み薬と違って全身に作用しない分、副作用が少なく体に優しい治療法と言えます。しかし、使用方法を誤ると皮膚のかぶれなどの問題が生じる場合もありますので、正しい知識を身につけて使用することが大切です。
湿布の種類とは?
湿布には大きく分けて「冷湿布」と「温湿布」の2種類があります。また、剤形によって「パップ剤」と「テープ剤」に分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
冷湿布と温湿布の違い
冷湿布(冷感タイプ)
- 貼るとヒヤッと冷たい感覚がある
- 主な配合成分:メントール、サリチル酸メチル、ハッカ油など
- 効果:抗炎症効果や鎮痛効果、炎症・痛みの抑制
- 適した症状:筋肉痛、ぎっくり腰、捻挫など急性の痛み、炎症がある・腫れている・熱を持っている場合
冷たい湿布を貼ると、冷たさで瞬間的に痛みが和らぐ感覚があります。これは、冷感により抗炎症効果や鎮痛効果が得られ、炎症や痛みの緩和に効果があるためです。患部が熱を持って腫れている場合は特に効果的です。
温湿布(温感タイプ)
- 貼るとじんわり温かい感覚がある
- 主な配合成分:トウガラシエキス(カプサイシン)など
- 効果:血行の改善、血液循環の改善および新陳代謝促進、関節・筋肉の鎮痛効果
- 適した症状:肩こり、腰痛、神経痛など慢性的な痛み、患部が冷たい場合
温かい湿布を貼ると、じんわり温まって痛みをほぐすような感覚があります。温めて血流を良くすることで血液循環を改善し、新陳代謝を促進することで筋肉痛や関節痛の緩和効果があります。
さらに、実は温湿布と冷湿布は感じ方が違うだけで、多くの湿布は鎮痛効果のある有効成分は同じものを使用しています。消炎鎮痛剤が同じ限りは薬の効果は同じです。そのため、どちらを選ぶかは、好き嫌いで構わない場合が多いです。ただし、処方箋で指定された湿布に関しては、基本的に選ぶことはできません。
パップ剤とテープ剤の違い
次に湿布の剤形の違いです。パップ剤とテープ剤があります。
パップ剤
- 水分を含む軟膏が不織布に塗布された厚みのある湿布
- 特徴:粘着力が弱い、かぶれにくい、肌に貼った瞬間にヒヤッとする
- 適した部位:背中や腰などの広くて動きが少ない部位
テープ剤(プラスター剤)
- 水分を含まない薄いテープ状の湿布
- 特徴:薄くて伸縮性がある、粘着性が高い、はがれにくい
- 適した部位:肘や膝などの関節部分、動きの多い部分
テープ剤は粘着力が強いため、はがす時に皮膚への負担が大きく、かぶれやすいというデメリットがあります。効き目に大きな違いはないので、使う部位や皮膚との相性などで選ぶとよいでしょう。
湿布の保存はどのようにする?
湿布は、温度や湿度、光によって品質が変化する可能性があります。正しく保存することで、効果を最大限に発揮させることができます。保存の注意点は以下のようになります。
- 高温多湿を避ける:通常は30度以下、冷所保存の場合は15度以下での保管が必要です。特に梅雨時や夏場など多湿や高温の時期には、カプセルが軟らかくなったり、カプセル同士が張り付いたりすることがあります。
- 直射日光を避ける:湿布は光によって品質が変化することがあります。直射日光が当たらない戸棚などに保管しましょう。
- 袋の開封口の処理:乾燥を防ぐために、取り出し口がチャック状になっているものはしっかり閉め、そうでないものは開封口を折り曲げて保管しましょう。
- 車内に放置しない:夏場の車内はかなりの高温になるため、湿布を車中や日差しが強い場所には放置しないようにしましょう。
また、以下のような場合は湿布が変質しているおそれがあるので、使用しないでください。
- 湿布の表面が乾いていたり、油浮きしていたりする
- 色が変わっている
- においが変わっている
変質した薬は、効果が期待できないだけでなく、皮膚トラブルの原因になることもあります。あなたの病気を治す薬を大切に保管しましょう。
湿布の正しい使い方とは?
湿布を効果的に使うためには、正しい貼り方と注意点を知っておくことが重要です。
基本的な貼り方
- 貼る部位を清潔にする:湿布を貼る部位の汗などの水分を拭き取り、清潔にしておきます。入浴後30分くらい経ってから貼るのがおすすめです。
- フィルムをはがす:湿布薬の裏面のフィルムをはがし、十分に伸ばしながら貼ります。ただし、引っ張りすぎると、皮膚に負担がかかりはがれやすくなります。
- 必要に応じて固定:必要に応じて、絆創膏やネット包帯などで固定します。
関節部への貼り方
肩や膝、足首などの関節部分に湿布を貼る場合は、フィルムをはがす前にはさみで湿布に切れ目を入れておくと、はがれにくくなります。これにより湿布が関節の動きに合わせてフィットしやすくなります。
さらに、一人で背中や腰など、手が届きにくい場所に湿布を貼るのは難しいものです。以下のコツを試してみましょう。
- 湿布の真ん中のシールを剥がす:利き手(例:右手)で湿布を持ち、もう一方の手で真ん中のシールを剥がします。
- 真ん中部分を先に貼る:湿布を垂らすように持って体の後ろに回し、痛い部分に真ん中を貼ります。
- 上部のセロファンを剥がす:一方の手で湿布の真ん中を押さえて、もう一方の手で上のセロファンを剥がしていきます。剥がしながらゆっくり湿布をなぞるようにして貼っていきます。
- 下部のセロファンを剥がす:同様に、下のセロハンをめくって剥がしていきます。
このようにすれば、一人でも背中に湿布を貼ることができます。腕の後ろや肩や首など、他の貼りにくい場所にも応用できます。
湿布の注意点
湿布は薬であるため、使用する際には注意をしなければならない点も多く存在します。
皮膚炎や皮膚のかぶれ
湿布を貼ると、赤く発疹が出たり、かぶれたりすることがあります。これは、自分の出した汗や汚れでかぶれてしまうことが多いです。また、湿布に含まれる成分に対するアレルギー反応を起こす場合もあります。
かぶれる原因としては以下のような原因が挙げられます。
- 皮膚のバリア機能が弱まっている人は、湿布を貼ることで汗や蒸れによってかぶれやすくなります。また、水分を多く含んでいるパップ剤は、汗だけでなく湿布自体の水分でも肌が荒れてしまうこともあります。
- 湿布の接着面には薬効成分のほか、患部の温度感に影響を与える成分、粘着成分が含まれています。これらの成分により肌が荒れてしまい、かぶれてしまうことがあります。
- 長時間湿布を使用することで、上記に挙げた原因が発生しやすくなります。
さらに、湿布による皮膚トラブルとして「光接触皮膚炎」があります。これは、湿布をはがした後、その部位に日光を浴びて発症する皮膚炎です。
- ケトプロフェンという消炎鎮痛成分が含有される湿布(モーラステープなど)で発症します。
- 湿布をはがした直後だけでなく、数か月前のものでも、薬剤が残っていてそこに日光があたれば出現します。
- 長方形のかたちに、かゆみを伴う赤みや水ぶくれ、湿疹が出ます。
これらの症状を回避するためには、以下のような対処方法があります。
- 原因となる物質を取り除きます。湿布薬でかぶれたのであれば、すぐにはがしてしまいましょう。その後に患部を清潔に保ちます。
- かぶれた患部がかゆみで気になっていても、更なる刺激を生じさせないよう、引っかかないように気をつけましょう。発赤や発熱を帯びていたら、保冷剤をタオル等で包んだもので患部を冷やすとよいでしょう。
- 貼る時には一枚ガーゼなどを挟んで貼るとかぶれにくく、はがすときには患部をやさしくぬるま湯で洗い、1時間程度皮膚を休めてから貼ります。どうしても被れる場合は、塗布タイプのものを使用します。
まとめ
湿布は、打撲や捻挫などの急性の痛みから、肩こりや腰痛などの慢性的な痛みまで、様々な症状に効果を発揮する便利な薬です。しかし、その効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、正しい知識と使い方を理解することが大切です。
湿布には冷湿布と温湿布、パップ剤とテープ剤などの種類があり、それぞれの特徴や適した症状を把握して選択することが重要です。また、保存方法にも注意が必要で、高温多湿を避け、開封後は袋をしっかりと閉じるようにしましょう。
湿布を貼る際は、皮膚を清潔にし、関節部分には切れ目を入れるなどの工夫をすると効果的です。一人で背中や腰に貼る方法も覚えておくと便利です。
正しい知識を身につけて、湿布を効果的に活用し、痛みのない健康な生活を送りましょう。何か不明な点があれば、当薬局の薬剤師にお気軽にご相談ください。